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大阪高等裁判所 昭和59年(ネ)1114号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

三英三郎が昭和五六年七月三日死亡し、同人の相続人がその子である被控訴人ら、平田茂夫、同明、同充、竹田和子の八名であつたことは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、英三郎の相続人である平田茂夫、同明、同充、竹田和子は、英三郎の相続が開始されたことを知つてから三か月以内である、平田茂夫については昭和五六年九月二二日に、同明については同年一二月二二日に、同充については同年一〇月一日に、竹田和子については同年一〇月二日にそれぞれ大阪家庭裁判所に相続放棄の申述をし受理されたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

右事実によれば、英三郎の相続人はその子である被控訴人ら四名のみであることが明らかであり、被控訴人らは遺留分権利者として各自英三郎の相続財産につき八分の一の遺留分を有するものといわなければならない。

控訴人は、共同相続人の一人が遺留分の放棄をしても他の共同相続人の遺留分に影響しないのであるから(民法一〇四三条二項)、相続放棄をした場合にも他の共同相続人の遺留分に影響することはなく、したがつて被控訴人ら各自の遺留分は一六分の一であると主張する。

しかしながら、相続放棄によつてその者は当初から相続人でなかつたものとみなされるのであるから(同法九三九条)、相続放棄した者について遺留分という観念は初めから存在せず、したがつてその放棄ということも考えることができない。ただ民法は遺留分と自由分の割合は遺留分権利者の数と無関係であるとする立場をとつているため(同法一〇二八条)、共同相続人の一人が相続を放棄した場合、その者以外の共同相続人の遺留分が結果として増大することになるが、これは民法が遺留分の割合について右のような立場をとつている結果であつて、遺留分が放棄されたことによるものではない。したがつてこの場合に遺留分放棄があつたとして同法一〇二八条の特別規定である同法一〇四三条二項の適用又は準用を考える余地はないものといわなければならず、控訴人の主張は採用することができない。

四英三郎が昭和五〇年三月二五日控訴人に対し本件土地を含む全財産を遺贈し、同人が昭和五六年七月三日死亡したので控訴人が同年九月一九日本件土地につき同年七月三日付遺贈を原因とする所有権移転登記を経由したこと、被控訴人らが英三郎の相続財産に対する各八分の一の遺留分を保全するため、昭和五七年五月一一日の原審第三回口頭弁論期日において、控訴人に対し本件土地につき各八分の一の持分の遺留分減殺の意思表示をしたことは当事者間に争いがない。

右事実によれば、被控訴人らは、英三郎が控訴人に対してした全財産の遺贈によつて各自が少なくとも本件土地の持分八分の一に相当する遺留分の侵害を受けたことが明らかであるといわなければならないが、被控訴人らが本件土地につき遺留分減殺請求により、英三郎の控訴人に対する本件土地遺贈の効力は右の限度で無効となり、したがつて被控訴人らは、本件土地につき各自持分八分の一の持分権を有するとともに、控訴人に対し右遺留分減殺を登記原因とする各自持分八分の一の所有権移転登記手続請求権を有することが明らかである。

(乾 達彦 東條敬 馬渕 勉)

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